お好み焼・たこ焼きの生地のベースは、いずれのお店も小麦粉と水とだしで作られています。
 なのに美味しさには違いがあります。なぜ?それは小麦粉を溶いた後の処理の仕方で変化が
 出るためです。また、小麦粉の種類、水で溶いた小麦粉の熟成時間、そして水やだしの、違いが
 味に大きく影響するためです。





 まず、材料の小麦粉ですが、あまり知られていないのが、小麦粉の熟成です。挽き立ての小麦粉は、
 粘りなどが少なく、粉を水で溶いたとき腰のない状態の生地が出来ます。小麦粉は挽いてから3ヶ月
 程度寝かせてやっと落ち着いてきます。
 小麦粉の中に含まれている小麦の持つ酵素が影響していると思われます。
 こうした長期間の貯蔵をしないで済む方法として、以前は小麦粉漂白剤を使って処理していました、
 しかし、この食品添加物は発ガン性なども疑われ、現在では食品添加物のリストから除外されています。
 したがって、小麦粉が新しい場合には、ある程度の熟成の為に寝かせる必要があります。

 次に小麦粉を水溶きした後の処理ですが・・たこ焼きともんじゃ焼きに当てはまると思います。
 小麦粉に水を加えて溶いて、そのまま使用するのと、一晩寝かすのとでは味や粘りに大きな差が出ます。
 その理由は、小麦粉の中に含まれている酵素が働くからです。この酵素は、デンプンを糖に変えるアミラーゼと、
 タンパク質を分解して、アミノ酸といった旨味成分をつくるプロテアーゼといったものです。
 糖ができれば、甘味が生まれるし、アミノ酸ができれば、その中にグルタミン酸やアスパラギン酸、グリシン
 といった旨味をもつものが味をひきたてます。

 これらの酵素は、夏のように暑い時は早く働くし活動も活発になります。反対に冬は活発に働きません。
 そこで、春秋はそのままで良いとして、冬は暖かい場所に生地を置く必要があります。逆に夏には涼しい
 場所に置くか、溶いた小麦粉を金属の容器に入れ、冷水の中に浸すなどの処置がいります。とくに、夏の
 気温が非常に高い時には酵素が強く働き過ぎる可能性があります。このような場合には、味が粗くなる
 傾向がありますので、できるだけ温度を下げて熟成させる必要があります。
 次に、生地に使用する水の問題です。水の違いは、生地の味に大きく影響します。微量では有りますが
 水に含まれるカルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルは水の味に大きな違いを与えるだけでなく、
 水で溶いた小麦粉の熟成にも関係があります。
 カルシウムがある程度多いほうが味が良いですが、多すぎると味のバランスは崩れます。大体、1リットル中に
 カルシウムが15〜25ミリグラム程度が含まれているのが理想とされています。
 マグネシウムが多いとタンパク質が硬くなり、生地が締まって食感が良くありません。カルシウムに対して
 マグネシウムはほぼ三分の一いかが良いみたいです。
 又、水に異臭があるときも全体の味を低下させます。臭いは非常に微量でも悪影響を与えるので、大都市の
 中でも水質が問題になっている地域では注意して、水道水をそのまま使用しない方が良いでしょう。
 なお、長時間の熟成をする場合には、だしを使用しないほうが良いでしょう。だしは、微生物にとって良好な
 栄養物ですので、食塩の濃度が高い時以外は、長期熟成は腐敗や食中毒の危険があります。
 熟成をあまりさせない場合は、味の補強という点でだしを使う事は良い方法です。
 お好み焼は材料に小麦粉と卵を加えてよくかき混ぜる方法で生地を作る場合が多いので、生地の熟成よりも
 粉そのものの味と卵の味の影響が大きいと思います。

 小麦粉は種類により、味が大きく変わってきます。大きく分けて、国産小麦と輸入小麦に分けられ、さらに
 タンパク質含有量により強力粉、薄力粉、中力粉などに分類されます。これらの違いは、小麦粉を溶いた時、
 粘りや味にも影響してきます。強力粉だと、弾力が強すぎて、餅か団子のような口当たりになります、これでは
 たこ焼きのソフトな生地の感触はでません。薄力粉だと弾力が少な過ぎて、べっとりとした感触になります。
 こういったことから、どのような粉を配合し、どの程度の食感をだすかは、経験がモノを言いそうだ。
 味の点から言えば、旨味の強い国産小麦粉に、薄力粉を混ぜるのが一般的に良いのではないだろうか。


 お好み焼やたこ焼きの生地に卵や山芋を加えるのは、口当たりを良くする意味があります。卵は、お好み焼では
 キャベツがたっぷり入っているので全卵でもいいですが、たこ焼きは卵黄だけのほうが口当たりが滑らかである。
 その理由は、卵黄にはレシチンと呼ばれる協力な天然の乳化剤が含まれていて、これが、材料の中に含まれると
 水と油を乳化させる力を発揮します。卵白は加熱されるとタンパク質がごわごわした感触に固まるので口当たりは
 ざらっとした感じになりやすいです。従って、滑らかな生地を仕上げようとすれば、卵黄だけを使うほうが良い味に
 なると思われます。
 山芋は、擦りおろして使用しますが、この際良くかき混ぜて気泡を入れておくと出来上がりがフワッとした感じに
 なります。これはおろした山芋に含まれる気泡が加熱により膨らんで組織が多孔質になるからです。


 お好み焼きには必ずたっぷりキャベツを入れます。キャベツは生のものではピリッとした辛味を感じますが、
 この成分が加熱により甘味のある成分に変化します。
 お好み焼に甘味をプラスしているのは、ソースの味もありますが、このキャベツに負うところが大きいといえます。
 それに、キャベツが加熱された時の口当たりもお好み焼の感触をよくしています。キャベツを直接加熱した場合と
 異なり、お好み焼では小麦粉の生地の間に挟まってゆっくりと加熱されます。又、お好み焼の生地には水分が
 少ないので、キャベツから水分が補給されるとともにキャベツも余分な水分が加熱によりそのままの状態で存在
 しなくなります。だからキャベツを煮た時のようにベタつかず、歯触りのよい仕上がりになります。
 キャベツを生地に混ぜて焼く調理法は、キャベツを美味しく食べる知恵でもあり、お好み焼の美味しさの要素の
 大きなポイントとなっています。


 たこ焼きの表面をカリッとさせ、中をトロッとさせるためには、生地にデンプンの量が多い方が良い。餅を熱い
 鉄板にこすりつけると薄いパリッとしたせんべいのようなものができます。餅はほとんどがデンプンで、タンパク質
 は少ない。小麦粉の場合も同様で、粘りの少ない小麦粉だけよりも、デンプンが少し加わった生地の方が表面が
 カリッと仕上がりやすい。又、中の方も小麦粉による粘りが少ないからトロッとした感触に仕上がります。
 デンプンの種類は何でもかまいませんが、熱が通るのに時間がかかるコーンスターチのようなものは避けたほうが
 良いでしょう。


 かつお節、青海苔ともに香りの効果を見逃すことができません。香りは味に対して非常に大きな影響を持っています。
 香りがこれらの材料の全てであり大きな魅力です。さらにかつお節にはイノシン酸が多量に含まれ、旨味をプラスする
 働きもしています。いずれにしても香りの効果であるので、風味の良いものを選ぶ必要があります。古くなり、風味の
 低下したものでは、お好み焼き、たこ焼きの風味を台無しにしてしまいます。


 紅しょうがには特有の香りと辛味があります。これらはジンゲロンとショーガオールという成分によるものです。
 いずれも、食欲を大きくかき立てる働きをしています。中でも大きい働きは、豚肉の生姜焼きでもわかるように、
 油のしつこさをサッパリとさせる意味が大きいです。特に紅生姜のように酢の味がある場合、さらに油の感じが
 サッパリします。また、紅生姜は、特に着色料で強く赤い色にしたものが好まれますが、これは赤い色には食欲
 を高める働きがあるからです。焼きソバなどのようなお好みソースの色でコテコテしたものでは、赤い色の効果
 は大きいと思われます。



    
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